海洋プラスチックごみ問題と対策

海洋プラスチックごみ

2019年8月17日、タイ環境保護当局によると、絶滅危惧種であるジュゴンのメスの赤ちゃん「マリアム」が、腹部にたまった海洋プラスチックごみによる炎症で死んだと発表した、と同国のメディアが伝えた。
4月に南部クラビ県の浅瀬に打ち上げられていたところ、現地の職員に保護されたマリアムは、人間に鼻をすりつけたりする姿が愛らしく、SNSで拡散されて一気に人気者となっていた。保護したのち海に帰していたが、幼いマリアムは、怪我して再び戻って来るを繰り返していたという。
現地メディアによると、死ぬ1週間ほど前、病気で保護されていたマリアムは、症状が急変してそのまま衰弱死。獣医師による検視の結果、腹部にたまったプラスチック片が消化器の閉塞を起こし、衰弱していたことが分かったという。

海洋プラスチックごみ問題による自然への影響は、このほかにも多数報道されている。
今年3月には、フィリピンで打ち上げられた鯨類の死体から、重さ40kgにもなる大量のプラスチック袋が見付かったという衝撃的なニュースもあった。

海洋プラスチックごみ問題とは

プラスチックごみは、レジ袋・ペットボトル・使い捨ての弁当などの容器、あるいは食品の保存のために使われる発泡スチロールなど、使わなくなった原油由来のもので廃棄されたものだ。それらがごみとなって、屋外に放置されたり、ポイ捨てされるなどして、適切に処理されないまま、風雨で河川に入り込んで海へ垂れ流しとなってしまい、海洋生物に悪影響を与えているのが問題となっているのだ。
環境省の調べでは、全国で回収した海洋ごみは2016年で3万トン。そのうちプラスチックごみが一番多かったとされている。
世界規模で考えた場合、すでに流出している分で1億5000万トンあると推定されおり、更には年間で少なくとも800万トン以上が海に流れ出ているとされている。

流れ出た大量のプラスチックごみが、海洋生態系に与える影響は甚大であり、今のところ悪化の一途をたどっている。
プラスチックごみ最大の難点は、容易に自然分解されないことに尽きる。というのも、もともとプラスチックは自然界になかったので、地球上の生物微生物では生分解できない。そのため、紫外線や物理的な劣化による方法などに頼るほかなく、自然に還るのに何百年とも、もしくは千年以上かかるともいわれている。
これらのプラスチックごみの多くは、自然劣化の過程で、小さなプラスチックの粒子となる。この時点では小さい粒子とはいえ、プラスチックの性質を保っている。それが世界中の海中や海底に存在しており、5mm以下のものは「マイクロプラスチック」と呼ばれている。マイクロプラスチックは海洋生態系で大量に取り込まれていると考えられているが、人間を含む生物の身体や繁殖など、具体的にどのような影響を及ぼすのか、詳しいことはまだ明らかにされていない

ごみの分別

海洋プラスチック問題対策

プラスチックは、耐水性に優れており、なおかつ生分解されないことこそが存在意義であり、急激にその使用量が増加したともいえる。使い捨て素材に限らず、パソコンやスマホ、自動車や飛行機、地中に埋めて水道配管や共同溝にも利用され、今の生活には欠かせないものである。
低コストであることと変容の容易さから、レジ袋など使い捨て素材として注目され、その言葉通り本当に使い捨ててしまったことで、自らの身に返ってきたのだ。
「海中のプラスチックと魚の重量は2050年には同じになる」というもいわれており、漁業で網にかかるのは魚と海洋プラスチックごみが半々になるという未来はまさに悪夢でしかない。

民間レベルの対策としては、エコバッグの普及やレジ袋の有料化、もしくは過剰な梱包の廃止であったり、最近ではプラ製ストローでなく紙ストローの使用といった、企業として対策に乗り出しているところも少なくない。

2019年5月、日本政府は「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」を策定した。
具体的な施策はこうだ

  1. 回収・適正処理の徹底
  2. ポイ捨て・不法投棄の取締り
  3. 陸域での散乱ごみの回収
  4. 海洋に流出したごみの回収
  5. 代替素材の開発
  6. 関係者の連携協働
  7. 途上国での対策促進のための国際貢献
  8. 実態把握

日本はプラスチックごみ対策について進んでいると言われている。事実2018年、国連が発表した報告書でも「日本の回収は見習うべき」とされた。確かに海洋プラスチックごみ対策は、他の国より進んでいるかもしれないが、リサイクル技術ではおくれを取っているともいわれている。
3R(リサイクル・リユース・リデュース)ももちろん重要だが、根本対策として、プラスチックを簡単に分解する方法、もしくは無害で完全なプラスチックの代替品を開発してほしいと切に願うものである。

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