地球温暖化~気候変動が社会にもたらすこと~

二酸化炭素

地球温暖化による洪水や高潮などの水害、そのほか土砂崩れなどの災害は、世界各地で頻発しているのが現状だ。今回は地球温暖化と気候変動の関係について、様々な論調があるのは確かだが、「1.5℃特別報告書」と呼ばれる報告書について考えてみよう。

1.5℃特別報告書

「1.5℃特別報告書」とは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が2018年10月に発表した、世界平均気温を現在と工業化以前(1850~1900年)を比較した際に、人間活動によって当時よりおよそ1℃上昇していると結論付けた報告書のことをいう。同報告書の中では、「気温1.5℃の上昇」の脅威とその排出経路、未来予測なども研究されていているので、少しだけ紹介していこうと思う。

報告書の中では、2017年の時点で、工業化以前よりも、およそ1℃も平均気温が上昇していていることが判明しており、もしこのまま温暖化が進むとするならば、2030年~52年の間に気温上昇がおよそ1.5℃に達する可能性が高いとされている。
更には「気温上昇を1.5℃に留めることができるのか?」「1.5℃上昇したときの気候変動の影響に適応できるのか?」といったクエスチョンに対し、その回答は1つではないとしながらも、今後の取り組みについての重要性を説く内容となっているとのこと。
1.5℃上昇に抑えるために必要なことは、二酸化炭素排出量を2030年までに45%削減(2010年比)、2030年以降2050年までに正味ゼロにすることが重要だとしている。そして、仮に2℃上昇まで許容した場合だとしても、2030年までに20%の削減、2075年までに正味ゼロにする必要があるとしているので、何も対策せず現状維持のままだとすれば、およそ達成しえない数値目標であることは想像にかたくない。
同報告書では、低炭素化・脱炭素化は必要としつつ、これまでに前例がないくらいに産業システムの移行を要するとしながらも、移行速度については前例がないわけではないとしている。結論として、脱炭素化を達成し、地球温暖化の原因となっている温室効果ガスの発生を抑制するために、現状とは異なった、化石燃料に頼らない代替エネルギーを、ブレイクスルーを期待している点については、少しばかり楽観的な気がしなくもない。
現在も、太陽光や地熱発電しかり、世界中いたるところでその研究は進められているが、石油依存が解消される未来が本当に訪れるか、定かではないのだから。

「1.5℃特別報告書」における貧困問題

2015年パリ協定において、気候変動抑制に関する国際協定が結ばれた。
1997年の京都議定書以来、実に18年ぶりとなる気候変動抑制に関する協定だが、気候変動枠組条約に加盟する196カ国すべてが参加した、温室効果ガスの排出量削減目標や進捗調査など法的拘束力のある批准書となっている。
しかし、その目標すべてが達成されたとしても、「1.5℃特別報告書」では、将来的に1.5℃の上昇に抑えることはないだろうと予測しているから驚きだ。前述の二酸化炭素排出量20~45%の削減とは、それほどまでに厳しい数値目標なのである。
気温
報告書の中で、「貧困問題」にも言及していることに着目したい。
貧困問題を解決することは、気候変動抑制と同様、喫緊の課題であり、そのための土地開発や農地開拓が必要であることは言うまでもない。
しかし開発や開墾することと、温室効果ガスの排出は、相反する表裏の関係ということができる。発電、ガソリン車、冷暖房、人口増加など、あらゆる面で、開発と二酸化炭素排出量の間には密接な関係があるからだ。反対に、貧困問題の撲滅のためには、気候変動対策は不可欠だとする、貧困から脱却できるよう途上国を支援している世界銀行の発表もある。世界銀行のレポートによると、異常気象による水と食料不足、経済の停滞が理由で、貧困問題は加速するというのである。
貧困問題を解決するために開発は必要であるが、その開発が気候変動を誘発し、貧困問題を加速する可能性があるというジレンマが生じているのだ。
このことについて「1.5℃特別報告書」では、必要最低限の開発と、温室効果ガスの削減は共存できるという予測を立てている。同報告書内でいうところの「持続可能な開発」と、それに続くように「貧困撲滅」が併記されているのはそのためなのである。

平均気温の上昇を1.5℃に抑えることとトレードオフ(負の関係)に位置する「貧困」や「開発」といった問題は、平均気温2.0℃上昇することに比べれば、貧困を撲滅することを優先課題とし、更に二酸化炭素排出量を削減することを重要視した方がよいということなのである。

「1.5℃特別報告書」まとめ

人為的な原因で2017年に約1℃平均気温が上昇したことをうけ、同報告書では、このまま何も対策をしないままではリスクが増大することは避けることができないと結論付けている。しかし一番残念なことは、その具体的対策法については答えを見いだせないでいることだろう。

日本では、20118年埼玉県熊谷市で、観測史上最高となる41.1℃を記録。同年6~9月、熱中症による搬送が95,137人、そのうち死亡が159人と、その5年前の2013年に比べて搬送の数で60%増、熱中症による死者にいたっては80%増と、大幅な増加傾向にある。
国や地方自治体、地域の適応能力を強化し、気候変動の脅威に対する対応を強化する取り組みがより一層求められているのは間違いないだろう。

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