生命保険料控除~種類・制度・かしこい利用法~

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生命保険控除とは、独自で生命保険に加入している者が、所得税や住民税を計算する際に、年末調整や確定申告といった方法で、所得から一定額を控除できる制度のことをいう。
そもそも保険とは、突発的なアクシデントで生じる損失へのリスクヘッジだ。加入するもしないも個人の自由であるはずだが、憲法25条を拠り所として控除しているといっていい。憲法25条では「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する生存権として知られているが、第二項で「社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」とし、社会保障について努力義務を課している。しかしながら、国民すべての社会保障を担保することは容易なことではない。よって、個人が民間保険に加入することで得られる「社会福祉、社会保障」について、負担する保険料に対しては課税対象としないという考え方に立脚した制度ということができるだろう。

控除される保険の種類

対象となる保険は「一般生命保険」「医療介護保険」「個人年金保険」の3種類ある。

一般生命保険 生存又は死亡に起因して一定額の保険金、その他給付金を支払うことを約する部分に係る保険料
(例)定期保険・終身保険・学資保険など
医療介護保険 入院・通院等にともなう給付部分に係る保険料
(例)医療保険・がん保険・介護保険など
個人年金保険 個人年金保険料税制適格特約の付加された個人年金保険契約等に係る保険料
(例)年金型の保険※支払期間が10年以上など、詳細な条件が付されている

この中で年金型保険に対する控除だけ、いくつかの条件がある。なぜならば、存命中に被保険者へ給付されるタイプの保険ゆえに、無条件で控除対象とすることがあっては、税の公平性という観点からも不適切とみなされる可能性があるためだ。年金型の保険を検討するならば、途中での変更ができないことが多いので、生命保険会社の担当者やFPに相談してみるのも良いかもしれない。

新制度と旧制度と控除額

2012年の制度改革により、以前までがん保険など医療介護保険は控除対象となっていなかったが、以降より対象となるよう改正があったため、控除額にも大きな変動があった。
トータルで見れば、医療介護保険という新たな控除が生じたことで、終身保険など一般生命保険、個人年金型保険の控除額が減じることとなり、全体の控除限度額は増加したということになる。

一般生命保険控除額 旧制度
所得税 50,000円
住民税 35,000円
新制度
所得税 40,000円
住民税 28,000円
介護医療保険控除額 旧制度
所得税 対象外
住民税 40,000円
新制度
所得税 対象外
住民税 28,000円
個人年金保険控除額 旧制度
所得税 50,000円
住民税 40,000円
新制度
所得税 35,000円
住民税 28,000円
全体控除限度額 旧制度
所得税 100,000円
住民税 120,000円
新制度
所得税  70,000円
住民税  70,000円

見ての通り、制度改革そのものは国民の福祉に資するものだったということができる。但し、現在は過渡期にあるため、新旧制度が混在しており、2012年以前の加入については旧制度、それ以降の加入については新制度が対象となっている。しかもこれまた例外があり、例えば旧制度より新制度で計算した方が控除額が多い場合がそれだ。合算可能な保険がある場合には、最低限のことは理解して、損がないようにしたいものである。
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ほかに注意したい点として控除金額について。
新制度では年間払い込み保険料80,000円を超えると所得税控除額は一律40,000円となり、旧制度なら年間払い込み保険料100,000円を超えると所得税控除額は一律50,000円と決まっているのだ。多額の払込保険料があったとしても、そのすべてが控除対象となるわけではない。

新制度の控除額

年間払込保険料
20,000円以下
所得税に対し全額控除
年間払込保険料
20,001~40,000円
所得税に対し 保険料×1/2 + 10,000円控除
年間払込保険料
40,001~80,000円
所得税に対し 保険料×1/4 + 20,000円控除
年間払込保険料
80,001円以上
所得税に対し 一律40,000円控除
年間払込保険料
12,000円以下
住民税に対し全額控除控除
年間払込保険料
12,001~32,000円
住民税に対し 保険料×1/2 + 6,000円控除
年間払込保険料
32,001~56,000円
住民税に対し 保険料×1/4 + 14,000円控除
年間払込保険料
56,001円以上
住民税に対し 一律28,000円控除

旧制度の控除額

年間払込保険料
25,000円未満
所得税に対し全額控除
年間払込保険料
25,000~49,999円
所得税に対し 保険料×1/2 + 12,500円控除
年間払込保険料
50,000~99,999円
所得税に対し 保険料×1/4 + 25,000円控除
年間払込保険料
100,000円以上
所得税に対し 一律50,000円控除
年間払込保険料
15,000円未満
住民税に対し全額控除控除
年間払込保険料
15,000~39,999円
住民税に対し 保険料×1/2 + 7,500円控除
年間払込保険料
40,000~69,999円
住民税に対し 保険料×1/4 + 17,500円控除
年間払込保険料
70,000円以上
住民税に対し 一律35,000円控除

新制度で考えると、サラリーマンなら年間8万円以下、自営業者では56,000円以下に抑える、旧制度ならサラリーマン100,000円、自営業者70,000円以下にした方が良いということが分かる。但し保険とは、未来に対するリスクヘッジという意味で加入するものだし、そもそも健康状態や家族構成によっても変わってくる。よって控除の損得だけで判断することは妥当とはいえない。あくまでそういう考え方もあるというくらいにとどめておく方が良いだろう。

保険と年末調整や確定申告

生命保険、年末調整、確定申告が得意だ、という人間は少ないだろう。
そもそもではあるが、サラリーマンであれば年末調整、自営業者であれば確定申告をしないと、控除を受けることができない。この時期もう終わってしまっている方も多くいるかと思うが、しっかりできただろうか。苦手とする者も多くいるだろう。各保険会社や共済組合などからの書類も取っておかないといけないし、必要書類を判断するのも面倒だと思う気持ちも分からないでもない。自営業者にとっては経費、さらには節税ともなことなので、苦手ではあっても、前向きに取り組むことも多いかもしれないが、サラリーマンにとって、この恒例行事みたいなものは面倒に感じることは少なくない。しかし逆に「面倒なことが嫌なら税金をより多く払え」といわれてよい顔をする人間は少ないはずだ。
恒例行事と割り切って、粛々と手を動かすしかないのである。

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